弁護士の仕事というのは、膨大な量の紙を使い、また紙を大量に廃棄するという文化が色濃く残っています。
私は、数年前から、この大量に紙を使う文化にストレスを感じるようになり、できる限り紙文化からの脱却をはかっています。
と言っても、まだ道半ばではありますが、私の紙文化の脱却作戦についてお話したいと思います。
<目次>
1.大量に紙を使う弁護士業務
2.紙文化から脱却したい5つの理由
3.私が実践している5つのペーパレス化への取り組み
4 まとめ ~諦めずに少しずつ工夫して前進していくことが重要
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1.大量に紙を使う弁護士業務
弁護士の仕事のうち、大きな柱を占めているのが文章を書くという仕事です。
裁判の業務では、訴状や準備書面など、裁判で法律的な主張を書面にして提出する必要があります。
わが国では、まだ裁判書類の提出がIT化されていないこともあり、書面を提出する際には、紙をプリントアウトして裁判所に持参または郵送するか、FAXで送るしかなく、いずれにしても紙を大量に使います。
さらに、こうしてプリントアウトした原稿は、事件が終わって不用になると、必ず専門業者に依頼して廃棄処分を行わなければなりません。
裁判書類は個人のプライバシー情報が記載されていますので、個人情報保護の観点からその管理をきちんとしなければならないからです。
いらなくなった紙だからといって、裏紙をメモ用紙にするなどということは許されません。
そうすると、日常的にに大量の紙を廃棄せざるを得ない状況があります。
エコロジーが言われている世の中、こんなことで良いのだろうかと、私は数年前からこの紙文化に大きな疑問を抱くようになりました。
2.紙文化から脱却したい5つの理由
(1)紙は重くて持ち運びが大変
まず、紙はまとまると結構な重さになります。
裁判の期日などには、この紙の記録を持って行く必要がありますが、1日に2つ3つ別の事件が入っていて、まとめて記録を持って出かけるようなときは非常に大変です。
裁判記録だけではなく、時には六法全書や専門書籍を持ち歩かなければならないこともありますが、これも結構な重さとボリュームになります。
したがって、裁判業務を行っている弁護士のカバンはほぼ例外なくサイズの大きなものです。
キャリーバックを引きながら歩いている弁護士も珍しくありません。
(2)場所を取るので保管が大変
また、紙は場所を取ります。
うちも、法律事務所なので、法律関係の書籍や判例集などをそろえておかなければならないのですが、それを置く本棚を確保しなければなりません。
さらに、担当している事件の記録を保管するためのロッカーが必要です。
通常の事件ならまだそれほど大量の記録にはなりませんが、私が担当している原発事故の事件など、集団訴訟の記録は非常に大量なものになり、事務所のロッカーを占領してしまいます。
こうした書籍や記録を保管するための事務所スペースにも、毎月家賃という固定費がかかっていますので、馬鹿になりません。
(3)紛失するリスクがある
私はやったことはありませんが、紙媒体では紛失するというリスクが常にあります。
さすがに、担当している事件の記録や書面をなくしてしまうということは決して許されません。
ただ、スケジュールを記載した紙の手帳をなくしてしまったという話はたまに聞くことがあります。
(4)自宅や事務所に置き忘れるリスクがある
コロナ禍になってからは、特に自宅で仕事をする時間も増えましたが、そうすると、事件の記録を自宅に持って帰る必要があります。
ところが、家で仕事をしようと思っていても、肝心の記録を事務所に置き忘れて帰ってしまったりするリスクはあります。
また、逆のパターンもあり、家で仕事をしていて、続きを事務所でやろうと思っても、その事件の記録を自宅に忘れて来てしまうリスクもあります。
記録が紙媒体だとこうしたリスクは常にあります。
(5)エコでない
また、冒頭でも書きましたが、個人情報の関係から、終わった事件の記録はすべて廃棄しなければなりません。
大量の紙を使用し、廃棄するというのは、やはりエコロジーの観点からは時代に逆行していると言わざるを得ません。
3.私が実践している5つのペーパレス化の取り組み
そこで、まだまだ道半ばではありますが、私が数年前から、紙文化に脱却すべく取り組んでいることを書きたいと思います。
(1)データをクラウドに保管
まず、書面のデータはすべてDropboxというクラウドに保存するようにしています。
そうすれば、事務所のパソコンでも自宅のパソコンでもどちらからでもデータを見ることができますので、自宅で仕事をする場合でも自宅に紙の書類を持ち帰る必要性がかなり減ります。
記録の紛失や置き忘れといったリスクもかなり減らすことが可能です。
(2)プリントアウトはできるだけ必要最低限に
自分が書いた書面を校正したり添削するために、わざわざ書面をプリントアウトする人がいます。
というか、恥ずかしい話自分も以前はそのようなことをしていました。
しかし、そのためだけにプリントアウトをするのは非常に無駄です。
慣れてしまえば、パソコン画面から校正や添削をすることは十分可能です。
とにかく、プリントアウトしようと思ったときに、それは本当に必要なのかどうか、厳密に考えるようにしています。
(3)手帳の電子化
以前は私も紙の手帳が大好きでしたが、今は手帳を電子化し、グーグルカレンダーで統一しています。
電子手帳は、スマートフォンとパソコンで同期できるので、大変に便利です。
紙の手帳のように紛失するリスクは少ないですし、万が一スマートフォンが紛失・破損しても、グーグルカレンダーのクラウド上にはデータが残っていますので、スケジュールそのものが分からなくなってしまうリスクはなくすことができます。
(4)書籍の電子化
移動中に読みたい本をかつてはカバンの中に入れて持ち歩いていましたが、今は基本的にKindleを利用しています。
スマートフォンされあれば、紙の本を持ち歩く必要がないので助かります。
よく、本は紙でなければ読めないという人がいますが、私の経験からすると慣れが大きいのではないかと思います。
さらに、六法全書はe六法を利用していますので、これもスマートフォンがあれば法令検索も大丈夫です。
また、最近利用し始めたのですが、専門書籍についてもクラウド書籍を利用しています。
これはまだお試しの段階ですが、弁護士ドットコムlibraryと、legallibraryの2つについて、無料お試しを使い始めました。
いずれもまだ書籍数が少し寂しい所がありますが、今後増えていくものと思われます。
これはかなり有り難いサービスで、専門書を探したり持ち歩く手間が軽減されます。
自宅で仕事をしていても、どこで仕事をしていも、手軽に専門書籍に当たって調べることができるサービスは非常に魅力的です。
(5)書面作成はティスプレイを使う
自宅でも事務所でも、基本のパソコンとは別に、もう1つずつディスプレイを置いています。
書面を作成する場合、別の書面を参照しながら書く場合が少なくありませんが、デイスプレイがもう1つあると、参照したい書面をそこに映しながら書くことができるので、紙の書類を見る必要がなくなります。
これがあると、書面作成の効率がかなり違うと感じています。
4 まとめ ~諦めずに少しずつ工夫して前進していくことが重要
とまあ、いろいろと書きましたが、正直に言って私のペーパレス化はまだまだ道半ばです。
わが国では、民事裁判がまだIT化されていないこともあり、「紙」の形で書面を提出しなければなりません。
また、証拠書類(契約書や診断書など)などはやはり原本を保管しておく必要もあり、データ化して廃棄ということができないケースも少なくありません。
ただ、そうは言っても、この業界もIT機器の進化に伴って、昔に比べれば相当程度ペーパレス化が進んできています。
道半ばでも諦めず、少しでもペーパレス化に向けて前進していくことはないか、日々アンテナを立てて工夫していくことが重要だと思います。
【編集後記】
遂に8月に入り,梅雨も明けましたね。
今年の5月から平日毎日ということで,ブログを更新し続けてきて,4ヶ月目に突入しました。
やってみると特に辛いものはなく,毎日楽しみながら続けています。
これからも平日毎日更新ということで,続けていきたいと思います。