今、相続登記を義務化する法案が作成されつつあります。
背景には、何代にもわたって相続登記がなされず、所有者不明の状態になっている土地が増加しているという問題があります。
相続登記が義務化されると、今現在相続登記未了の不動産についても、相続登記が義務づけられるようになる可能性が高く、そうなると何らかの対策が必要になってきます。
<目次>
1.相続登記を義務化する法案審議の背景事情
2.相続登記を義務化する法案の内容
3.まとめ ~早めの対策が必要
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1.相続登記を義務化する法案審議の背景事情
相続によって不動産を取得した場合、登記の名義を亡くなった人から相続した人の名義に変更することを相続登記と言います。
この相続登記を行うためには、登録免許税や司法書士に支払う手数料など一定の費用がかかります。
そうなると、たとえば地方の価格が安い物件(特に田畑や山林)などは、わざわざ手数料を支払ってまで相続登記をして名義を変更するメリットがほとんどありません。
そして、現行の法制度上は、特に相続登記を行うことは義務になっていません。
したがって、このような物件では、所有者が亡くなっても相続登記がなされず、その結果、不動産の名義が何代も前のとっくに亡くなった人の名義のまま放置されているということも珍しくありません。
かなり前になりますが、この問題をある程度突っ込んでブログに書いたことがあります。
「権利者が100人に!? ~相続登記をしないで放置した場合の不都合」https://ameblo.jp/bigsaga/entry-12055491461.html?frm=theme
相続登記を行わないまま長期間放置されると、相続人についてさらなる相続が発生するなどして、権利関係が複雑になり、最終的に所有者を特定することができなくなってしまいます。
そして、こうした所有者不明の土地が増加し、空き家問題や空き地問題を発生させていることなどから、今回の法案の動きになっているようです。
2.相続登記を義務化する法案の内容
こうした背景から、法務省による「法制審議会民法・不動産登記法部会」の会議が行われ、相続登記の義務化について検討されているようです。
現在検討されている法案では、今後不動産の相続が発生した場合に相続登記が義務化され、もし相続登記を怠った場合には過料の制裁というペナルティーも検討されているようです。
さらに、この法案が成立した場合、将来の相続だけではなく、すでに発生した相続において、相続登記が未了のケースにも適用される方向で議論されています。
そうなると、今現在相続登記未了で放置されている物件も一応対象となることになり、違反すると過料の制裁が科されることになるわけです。
ただし、正当な理由によって相続登記ができないようなケースは例外扱いとなる議論もなされているようです。
そして、正当な理由がある場合の例としては、①何度か相続が発生していて相続人が極めて多数であることにより、戸籍謄本等の必要な資料の収集や他の相続人の把握に時間を要するとき、②遺言の有効性が争われる訴訟が係属しているとき、③登記申請義務者に重病等の事情があったとき、④登記簿は存在しているものの、公図が現況と異なるため現地をおよそ確認することができないときなどが考えられるとされています。
逆に言えば、このような正当な理由がある場合以外は、既存のケースについても相続登記をしなければならなくなる可能性が高いようです。
3.まとめ ~早めの対策が必要
この法案は、現在法制審議会において審議中ですが、スムーズに行けば3年後くらいには新制度としてスタートするような方向性となっているようです。
上記の内容で新制度ができてしまうと、上記の正当な理由に該当しない場合は、既存のケースでも相続登記をしなければならなくなり、それを怠ると過料の制裁というペナルティーが科される可能性があります。
ですから、もし相続登記未了の物件をお持ちの方は、早めに相続登記の手続きを済ませておいた方が無難であろうと思われます。
相続人同士がもめていて遺産分割協議ができず、その結果相続登記も未了になっているようなケースも少なくないと思われます。
相続人同士の話し合いでは解決しない、あるいはそもそも話し合いができないようなケースでは、早めに弁護士にご相談されることをお勧めします。