前回は、お金のブロックパズルを使って、会社のお金の流れの全体像を見てみました。
それでは、会社の利益も増やし、社員の給料も上げるにはどうしたら良いのでしょうか?
<目次>
1.売上が10%増えたら会社の数字はどうなるか?
2.労働分配率がカギ
3.社員のボーナス原資が2倍に!?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
1.売上が10%増えたら会社の数字はどうなるか?
前回のところでは、お金のブロックパズルを用いて、売上から利益、最後の繰越金まで数字を入れてみました。
売上や粗利が伸びないという前提で、利益を増やそうとすれば、一番安易な方法としては人件費を減らすというやり方があります。
しかし、これは前回お話したとおり、社員のモチベーションや生産性を下げることになるので、長期的に見れば会社にとってはマイナスになる方法です。
他方で、売上や粗利の数字を伸ばすことができれば、それだけ人件費や利益も増加する余地があります。
それでは、具体的にはどの程度売上や粗利を増やせば良いのでしょうか?
この点、売上や粗利が前年比で2倍、3倍にもなれば良いのでしょうが、現実問題として、このご時世で1年で売上をそこまで伸ばすことは非常に困難で、現実的ではありません。
ただ、前年比で10%増くらいであれば、売上や粗利を増やすことはできるかもしれず、現実的な目標と言えるかも知れません。
仮に、売上が10%伸びた場合の各ブロックの数字は次のようになります(赤字の部分)。
売上は110となり、変動費は売上に比例して増えますので22、そして、粗利率は基本的に大きく変わりませんので、粗利は88となります。
そして、固定費のうち、その他固定費は基本的に変わりませんので30、人件費は労働分配率が50%で変わらなかった場合は44、そして最終的な利益は14となります。
ここでまず注目すべきは、売上が10%増えると、最終的な利益は対前年比で140%にもなるということです。
2.労働分配率がカギ
それでは、会社の売上が10%増えた場合、社員の給料はどうなるでしょうか?
ここでは、先ほど見た労働分配率が1つのカギになります。
労働分配率とは、粗利に対する人件費の割合のことです。
人件費は、固定費の中でも最も大きな費用ですので、会社の規模や経営状態に応じて、大きすぎず、小さすぎず、適切にコントロールすることが必要です。
この点、労働分配率がどの程度であれば適正なのかは、業種や会社の規模によって様々ですが、一般的な目安としては、50~60%であれば妥当なライン、60%以上であれば少し人件費負担が重いと言われています。
この点、上記の例では労働分配率が50%ですから、まあ適正なラインと言えそうです。
そこで、売上が10%増えて、労働分配率を以前と同じ50%にすれば、上記のお金のブロックパズルで人件費は40から44に増えることになります。
つまり、売上が10%増えて粗利も10%増え、人件費も10%増えたことになります。
3.社員のボーナス原資が2倍に!?
大切なことは、この人件費10%アップをどのように捉えるかということです。
人件費のうち、中小企業の場合はだいたい3~4割くらいが役員報酬であると言われています。
残りの6割とか7割が社員の給料・ボーナスの割合だということになります。
そして、社員のボーナス分というのは、概ね人件費全体の1割くらいと言われています。
そうすると、上記のお金のブロックパズルで見ると、以前の人件費40のうち、ボーナスは1割で4相当がボーナス分ということになります。
そこにさらに、40から44に増えるわけですから、4増えて、社員のボーナス原資が2倍に増えるということになります。
これは、計算上は、たとえば前年は夏と冬に社員がボーナスをもらっていたものが、さらに今年は2倍、春と秋にもボーナスが出るということを意味します。
このように、売上が10%伸びるだけで、会社の利益は対前年比で140%にもなり、社員のボーナス原資が2倍になるのです。
それでは、この売上や粗利を増やし、会社の利益と社員の給料の両方を上げるために、会社が具体的にやるべきことは何なのか、これを次回にお話しようと思います。