日本国憲法は全部で1条から99条まであります。
この中で、一番大切な条文、言いかえれば、日本国憲法で一番大切な価値は何でしょうか?
<目次>
1.憲法をまったく知らなかった法学部生
2.日本国憲法で最も大切な価値は個人の尊厳
3.弁護士としての私のミッション
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1.憲法をまったく知らなかった法学部生
日本国憲法で最も大切な価値は何かと問われて、答えられるでしょうか?
私は大学の法学部に通っておりましたが、まったく知りませんでした。
一応、昔社会で日本国憲法の3大原則を教えられます(それすら怪しかったですが)。
すなわち、国民主権、基本的人権の尊重、平和主義の3つです。
しかし、日本国憲法の一番重要な価値を1つあげるとしたら何でしょうか?
私がそれを知ったのは、その後司法試験の受験を決意し、司法試験予備校である伊藤塾に通い始めてからです。
伊藤塾の塾長である伊藤真氏から、日本国憲法で一番大切な価値は、第13条の個人の尊厳だと教えられました。
まさに、目からウロコ状態でした。
2.日本国憲法で最も大切な価値は個人の尊厳
憲法第13条は、「すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。」と規定されています。
これが、日本国憲法で最も重要な価値である個人の尊厳を規定した憲法13条の条文です。
つまり、日本国憲法は、国家権力よりも、企業よりも、家庭よりも、まず個人が最も大切であるという価値観で貫かれています。
逆に言えば、国家権力も企業も家庭も、すべて個人が幸せに生きていくために存在すべきものであり、こうした国家権力などによって個人が犠牲になってはならないということを意味しています。
そして、先にあげた3大原則も、すべて個人の尊重に奉仕するところに意味があります。
すなわち、個人を大切にするからこそ、国家権力の体制は独裁ではなく、国民主権や民主主義が大切だということになります。
また、基本的人権も、個人の人権を保障するところに基礎があり、個人の尊重に資するために定められています。
さらに、個人を大切にするがゆえに、個人の人権を抑圧することになりがちな戦争を放棄するという平和主義が定められています。
個人の尊重の価値観はまた、いろいろな個性や価値観を持った人たちを互いに尊重し合うという多様性の社会を意味します。
結婚するしない、子どもを持つ持たない、恋愛対象として同性を選ぶか異性を選ぶか、どんな職業を選び、どんな地域に住むか、どんな人と付き合うか、こうしたこともすべて個人の自由な判断にゆだねられるべきで、そうした一人一人の個性や違いを尊重する社会を想定しているのです。
つまり、人と違っていても良い、むしろ人と違うことがすばらしいという価値観です。
私は、司法試験の受験時代、この価値観にどれだけ救われたかわかりません。
大学時代の友人たちはみな社会に出て活躍しているのに、自分だけは孤独に司法試験の受験勉強をするという道を選びました。
自分だけ人と違う道に行ってしまったが、大丈夫なのだろうか、自分は社会の落伍者になってしまうのではないかと、内心は不安でたまりませんでした。
しかし、日本国憲法の個人の尊厳という価値に触れ、人と違っていても良い、自分は自分の信じる道を進めば良いのだという勇気をもらったのです。
3.弁護士としての私のミッション
弁護士法という法律があり、その1条には、弁護士の使命が書かれています。
すなわち、「弁護士は、基本的人権を擁護し、社会正義を実現することを使命とする。」と規定されています。
人権を擁護することが使命であり、これは日本国憲法の最大の価値である個人の尊厳を社会で実現していくことに結びついています。
私は、自分自身が憲法の個人の尊厳という価値観に救われたように、この価値観を社会に浸透させることにより、多くの人に幸せになってもらいたいと思っています。
弁護士は、お困りごとやトラブルを解決するのが仕事ですが、トラブルの解決は、その人がトラブルを乗り越えて成長し、幸せに向かうために必要なプロセスなのです。
そうした人の幸せ作りのお手伝いをすることで、個人の尊厳という憲法の最大の価値を社会の中で実現し、人々の幸せの総量を増やしていくことが、弁護士としての私の使命であり、ミッションであると思っています。
【編集後記】
いつも睡眠時間は4〜5時間くらいで目が覚めてしまうのですが,今日は7時間ぶっ通しで寝てしまいました。
確かに,今週は出張やら何やらあって,疲れていたのかも知れません。
疲れている時には無理をせず,休息することも大切ですね。